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山形県に伝わる風習、ムカサリ絵馬ってご存知?
それは、若くしてこの世を去ってしまった人が、あの世で結婚して安らかに過ごせますようにと、親や親戚の者が故人の結婚式を描いたもの。
人の死に関するセンシティブな内容の手前、好奇な目で見に行くのはなんとなく後ろめたいですが、それがなかなか個性的で味わい深く、一度実物を見てみたいじゃないですか?

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ムカサリ絵馬があるお寺はいくつかあって、どこに行くかは各自ググッてもらうとして。
今回訪れたのはまずこちら、若松観音。
縁結びの寺としても有名で、西の出雲大社、東の若松観音と称されるほどのパワースポット。

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ムカサリ絵馬があるのは入り口を入ってすぐ右側にある絵馬堂。
無料で気軽に入れるので早速中をのぞいてみると

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あったー!!!
丁寧に額に飾られ大切に保管されているムカサリ絵馬・・・!!!
ここにあるのはまだほんの一部で、現在までに奉納されている絵馬は1400枚以上。

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古いものはなんと明治時代のものも!!!

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こちらは昭和のはじめごろ。
軍服を着ているあたり戦争で出征して帰ってこなかった息子の様子。
元々は婚姻していない男性を供養して半人前の状態から一人前の状態にするという親心が動機だとか。
そこから時代が変化して、結婚適齢期前の水子や享年四十代以降の霊、さらに弔いあげを既に終えた霊、先祖代々の霊も・・・と、ムカサリ絵馬の登場人物になる対象は拡大中。

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こちらにはニューギニアで戦死した20歳と24歳の兄弟。

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ひとつひとつの絵を見ると、それぞれの時代の様子が垣間見れて興味深い。
昔はこの地方の方からの奉納ばかりだったところ、近年はテレビやネットの影響で他県の奉納者も多いとか。
ムカサリ絵馬は、もともと東アジアでみられる死者の婚礼「冥婚」に由来すると言われていて、
中国では生まれること、死ぬこと、そして結婚が人生の3大行事と考えられている。その中で結婚が欠けていると、あの世に行けないという考えがある。日本へ文化が伝播したときに、一緒に伝わったのでは
だって!!
え!!じゃあわたし、このまま結婚できずに死んだら成仏できないってこと!?
だれかわたしが死んだら特段のイケメンと結婚する姿を描いておくれ~!!頼む~!!

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ムカサリ絵馬のスタンダードは、正装の故人と架空の花嫁の婚礼の様子が描かれていて、これは実在する人を描いてしまうと、その人もあの世へ連れてってしまうからという言い伝え。
そうゆうファンタジーな部分もあるところも魅力的ですね。

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この人たちの表情も実に絵心があってステキ。
着物の柄や部屋の造りなど細かいところまで丁寧に描かれていて、全体に愛が溢れる作品に。
人の死がまつわると「怖い」とか「かわいそう」とかいう感情がつきものだけど、これを見るとなんだかやさしい気持ちになりますね。

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こちらはなるほど!
よりリアルを追求した合成写真のムカサリ絵馬!
成人の写真の顔に、どう見ても子供の顔がハメこんであります。

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こちらは3組の合同結婚式?
それとも3パターン着せてあげてるんでしょうか。
和装タイプに加えウエディングドレスも登場。
今までの、親戚が家に集まるオールドスタイルから、自分たちだけのフォトウェディングへ。
時代の変化を感じますね。

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近代になると背景もなくなり故人と結婚相手のみ、カメラ目線で記念写真スタイルへ。
本来は故人の遺族が描くのが供養とされていたムカサリ絵馬も、絵が苦手という人はムカサリ絵馬師に頼んで描いてもらうこともできるとか。
そのため時々、似たような顔で同じ構図の絵も見かけます。

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こちらが若松観音の本坊。
中は撮影禁止ですが、ここにも大量のムカサリ絵馬を見ることができます。

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ついでに入り口のそばにある子育て地蔵堂には
グーグルアドセンスさんが毛嫌いする、乳房をかたどったありがたいものが奉納されているので一見の価値あり。


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続いて訪れたのは黒鳥観音。
早速本堂の中に入ってみると

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ひゃーーーーー!!!!!
すごーーーーーい!!!!!
壁と天井に隙間なく、ムカサリ絵馬がビッシリ!!!!!

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山奥にひっそりとたたずむ小さなお堂の中がコレ。
めちゃくちゃ異空間でゾクゾクするでしょう。

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入り口や外の壁にバシバシ貼られているのは納札。
大量のこれがまた、ここの雰囲気を盛り上げている。

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ここのムカサリ絵馬も、明治時代の古いものを発見。
アンティークすぎて紙が破れてきているものの、繊細に描かれている様子が見てとれる。

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こちらも明治時代のもの。
めちゃくちゃ保存状態がいい。

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こちらはいつごろか書いてないけど、着物やゲタを履く一方、帽子や洋傘を持ち、ブーツや靴を履く、和装と洋装が入り混じったまさに文明開化の時代。
特に古い時代のものは婚礼の儀式の中でもこうした屋外での様子が多く描かれている。

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故人の前には鶴や亀、松や梅といった、世のめでたいものが勢ぞろい。
お嫁さんの着物の柄もよく見て?すごいでしょう??
こっちにも松竹梅などめでたそうな細かい絵がビッシリ丁寧に描かれていてスバラシイ!!

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こちらは令和になってからの最新式スタイル。
同じムカサリ絵馬師が描いたんでしょうか、顔つきや構図がよく似ています。

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このあたりは絵がうまい親族が描いたようなオリジナリティのあるムカサリ絵馬。
絵画コンクールで賞を獲りそうな作風から、まるで少女まんがのようなタッチまで並び見応え充分。

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すべて「結婚式」というテーマでこれだけ作風にばらつきがあるかね!と展覧会を見に来たジジイのような気持ちで鑑賞。
どれもこれもすばらしいですな~

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こちらは作者は違うものの、テンプレートでもあるのでは?ってくらい似たような構図。
背景がないと、オリジナリティを出すには着物の柄くらいしかないからね。
そろそろこの、ノー背景のカメラ目線をキメこむ記念写真スタイルも飽きてくる時代では。

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結婚というテーマを描くだけで、これだけ時代背景や結婚スタイルの変化を表す風習っておもしろいな~
しかも現代も現在進行形でその形が変わり続けていると思うと、どうなっていくのかまた訪れたいよね。
これからはもっといろんな人種や宗教、趣味や思想などバリエーションが増えて、衣装や背景が変わったり、結婚相手にキャラクターやラブドールが描かれたりするのかな。
こりゃあなかなかあの世へはいけませんな~


若松寺(若松観音)

住所: 山形県天童市山元2205-1
TEL: 023-653-4138



黒鳥観音

住所: 山形県東根市大字東根1810
TEL: 0237-42-1111





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