
SNSで話題沸騰!サブカル好きはみんな行く!新潟市美術館で開催された企画展『路傍小芸術』を見に、新潟へとやってまいりました。
美術館の企画展といえば、有名な芸術家や作家による正当で価値が確立された芸術、ルールで作られた美しさがもてはやされますが、『路傍小芸術』とはそれとは真逆の、誰も芸術だと思ってないから見過ごされている、そのへんにある文字とか絵とかに焦点をあてた企画展なんです。
まさに、ものを正面からでなく、ひねくれた目線でばかり見る私たちサブカル好きのためのやつ!
ありがとうございます!!

早速チケットを買い展示室の方へと向かうと、企画展の入り口に早速!新潟と言えば松田ペットの看板!!
こちらは松田ペットと、新潟を拠点とするアイドル「Negicco」とのコラボ看板で、メンバーがあの看板の犬に!
あのかわいい犬に変身できるなんて、これは今後松田ペットのアニマルフィルター流行るのでは??

隣にはなんと、実際の松田ペットの看板を使った顔ハメパネルも設置!
これはすごくいいパネル~!!みんなハメ撮りしたくなるのでは。
それはそうと松田ペットって当たり前のように言ってるけどなんなんだよ?という方はまずこちら↓をご覧ください。

さて、企画展のまずはじめは「にいがた銭湯展」
年々減少しているまちの銭湯にまつわる歴史やアイテムなどを紹介。
廃業してしまった銭湯で実際に使われていたものもたくさん展示されていて、レトロ好きとしても大興奮!

パンダがかわいい入浴注意看板。
カッパのパターンもあるとのこと。

にいがたの銭湯アルバム。
銭湯ごとにまとめられたアルバムをこれだけ並べられるとさすがに迫力ある~!
銭湯のアートといえばやはり、壁に描かれているタイル絵やペンキ絵でしょう。

銭湯の壁画といえば富士山が定番でしょうか。
各銭湯の壁画はもちろん、浴槽の形や外観、看板などどれも個性的で、今の時代にはない魅力が満載。
これは見ごたえある~!

意外とこの西洋風の景色の壁画もよく見る気がする。
日本人の、西洋への憧れから採用されたんでしょうか。

なんだこれは!?こんなメルヘンチックな壁画もあるんだ!!おもしろすぎる。

同じ銭湯のこっちは男湯かな?
こっちには未来都市みたいな壁画が描かれている。
銭湯の壁画ってこんなにも自由だったんだ!
ほかにももっとおもしろい絵はないのかな?って探したくなっちゃうな!

さらにこちら、白滝の湯の壁には文字通りひらがなで「しらたき」をタイルで。
変化球がすぎる!銭湯ってアートだったんだ!!

こちら、まちの銭湯を回ってもらう取り組みの一環として、各銭湯でもらえるトレーディングカード。
めちゃくちゃ力が入っててすごい。本気度が伺えますね。

そのトレカイベントのポスターが、パチ屋の新機種導入の宣伝すぎる。

こちらは横尾忠則が描いた、東京都公衆浴場業生活衛生同業組合のポスター。
かっこいいですな。

続いてこちらは「思い出のセメント彫刻」
県内の小学校や公園にしれっと置かれた、誰が作ったのか、なぜここにあるのかわからない、日常に溶け込んでいて誰も気に留めないような像をコレクション。
手作りゆえのへたうま感や、コンクリート特有の劣化を楽しもうという視点でしょうか。

あ!これは有名な、新潟市にいる巨大仏!
ここにいるよ↓

マッチョにウットリする女性。
こういう視点を得ると、自分でも探してみたくなりますね。


続いてこちらのコーナーは「ミニコミ誌『車掌』第27号はカルタです」
1987年に創刊されたミニコミ誌「車掌」をご存じでしょうか。
「車掌」は知る人ぞ知る伝説的なサブカルチャー誌であって、内容の説明が非常に難しい、サブカル視点を先取りしていた、ひとことであらわすと尖りすぎてわけのわからないミニコミ誌とのこと。

その表紙がズラッと並んでるわけだけど、何度見ても何度読んでも表紙からして意味がわからない。
何回噛んでも全然味がしない、木の皮でもしがんでんのかというくらいに。
これはまったく意味のない、架空のものを並べただけの、こどもが遊びで作った雑誌ですと言われた方がしっくりくる、それくらいわけがわからないんです。
これだけわけわからないものを作る方が逆に難しいでしょ。

「車掌」の内容は、毎号ひとつのテーマを掲げ、一見すると無意味で過酷な実験を編集部員に課し、その過程を膨大なテキストで記録するというスタイル。
誌面は手書き文字や細かい活字でびっしりと埋め尽くされており、読むのに非常に時間がかかる密度があり、この執念ともいえる作りこみが「私だけは理解できる」っていう優越感に浸れる熱狂的なファンを生んでいるとのこと。

車掌15号は画鋲がテーマ。
日本中の画鋲の種類を調べたり、画鋲の歴史を掘り下げたり、画鋲を壁にさす感触を言語化したり…それらを膨大なテキストで解説。
ほかの特集では、同じことを100回繰り返す(100回お見合いをしたり、100回同じ場所へ行ったり)無謀な挑戦を記録したり、旅の途中でゲップが出たらその方向へ進むというルールだけで移動し、そこで出会った風景を記録。これって、のちの電波少年ですか?
意味のあるものを効率的にこなす今の時代とは真逆の、無意味で無駄(だと思える)なことを全力でやる、その狂気的な情熱が魅力の様子。
ということは、これらの表紙もその「個人的な執念」「得体のしれないエネルギー」「よくわからないがゆえのわくわく」という、意味というより情熱を表現しているものとして見れば、なんとなくわかったような気がします。

そしてこれがその、第27号であるカルタ。
すべて「よ」で始まる、全部違う絵が描かれているカルタですって。
もはや本ですらない、箱に入ったミニコミ誌というわけ。
尖りすぎて

こちらは「ある三人の画家」
広く名は知られていない、片手間で画家をやっていたような絵のうまい素人たちの作品。
そんな作品の中からも心打たれるものがあるのでは?とのこと。

続いてこちらは「昭和50年代金沢〈架空線工房〉の映画ポスター」
「架空線工房」を名乗る青年たちが制作した映画ポスターが、映画の内容を伝えるだけでなく、その時代の街の温度や空気感を伝えていると注目。


独特の文字とデザインで、見る人の目を釘付けに!
ポスターを見ただけでわくわくするし、どんな映画なのかな?おもしろそう!と観に行きたくなる。

あらゆるフォントで描かれた、フォント一覧のようなタイトルの数々。
それぞれの映画の内容にフィットした文字で描かれてるのがすごい。
写真も絵もないのに、タイトルとフォントからどんな内容なのか?想像したくなる。

まあ!!これはすごくいいね!!現代でも開催されたら人が集まるのでは?
どのポスターもグッズ化してほしいくらいデザインがすばらしい!!


こちらは「大衆割烹〈大佐渡たむら〉のお品書き」
1967年にオープンした名店、海鮮・郷土料理「大佐渡たむら」で実際に使われていたのがこのお品書き。
これは先代店主の田村信郎さんが、黒いゴム板やビニールテープから文字を切り出し、白いプラスチック板に貼り付けていたもの。
家族には不評で「せっかく達筆なのにどうしてこんな字になるの」と不思議がられ、酒瓶や食器を並べる棚の前にもプラスチック板を吊るものだから邪魔にされていたそう。
現在はもう使われていないとのことだけど、こんなお客さんを喜ばせてくれるお品書き、ほかで見たことない!

近くでよく見ると文字が浮き上がっていたり、素材が違っていたりと新たな発見。おもしろいなあ!
現在は使われてないだなんて、本当にいいんですか??

大佐渡たむらの2代目店主は姉とともに会社を設立し、あの有名な古い商店街をリノベして復活させた沼垂テラス商店街をオープン!
そうだったんだ!!沼垂テラス商店街とはこんなところ↓

こちらは「新潟地震と児童版画」
1964年6月16日に新潟地震が発生。
新潟市立南万代小学校に通う子供たちも被害にあい、これらは6年2組の子供たちが卒業の記念に制作した、当時の様子を表した版画集とのこと。

道路や家屋の損壊、コンビナートの火災、避難生活の様子などが、小学生特有の力強いタッチで描かれております。
当時の映像にも劣らぬ、衝撃の深さが伝わってきますね。

続きまして、路傍小芸術でもっとも人々を驚かせていたのがこちらじゃないでしょうか。
この広い面積を使ってズラり並んでいるのが「越後川口サービスエリアの手描きポスター」


このポスターを描いているのは水落裕子さん。
1982年にオープンした越後川口サービスエリアで開設時からエリアコンシェルジュとして働き、1988年7月から水落さんは、新潟県内の様々なイベント情報を手描きでまとめたポスター「行事祭だより」を毎月欠かさず作り続けているんです。
2026年の現在まで!37年6か月!!毎月!!欠かさず!!すごすぎる!!

その圧倒的な情報量、あざやかな色彩、そしてディテールへのこだわりがとにかくすごすぎる!と話題に。
行事や祭りなんて毎年やってること同じじゃない?正直去年のコピペでもなんの問題もないところ、よく見ると年ごとに若干書いてある内容が違ったり、特に色使い、デザインはすべて違う!!

見どころは独自のテクニック。
誰かに学んだわけでもない、自ら編み出した文字や装飾のテクニックに注目。
たとえば
●文字種ごとに大きさを変える。漢字は大きく、ひらがなは小さく、カタカナはその中間くらい。文字間はなるべく詰め、可読性と情報量を同時に高める。
●固有名詞やイベント名はひらがなでも大きく書いて強調。


●文字色を変えて紙面を区分け、全体を見ると鮮やかなグラデーションや文様があらわれる。


●文字に別な色を重ね、ひとつの文字の中にもグラデーションや景色を作り出す。

●水に溶いたPOSCAのインクを歯ブラシにつけて弾き、細かな色彩の飛沫を作り出す。

●切り絵、ちぎり絵、水に溶いたPOSCAのインクで「初春」などの毛筆も。

●ペン先がボサボサになってくると始筆・終筆がきっちり決まらないので、細いペンで線の起点と終点を縁取って始末する。

近年になるにつれ、そのテクニックにますます磨きがかかり、どんどんクオリティがあがっているのがすごい!!
水落さんの本務はエリアコンシェルジュとしての案内業務で、ポスターはその合間を縫って制作。
1枚当たりの制作時間はおよそ5時間。イベント情報を集めて簡単なメモを作るだけで、あとは下書きなし。

水落さんの作品を楽しみにわざわざ越後川口サービスエリアを訪ねるファンも多いのだそう。
これからも楽しみにしたい!と思っていたらなんと!水落さんは2026年3月で退職する予定とのこと。
新しい作品が生み出されなくても、これらの作品がまた多くの人に見てもらえる機会があるといいね!

続いてこちらは「地下駐車場のサンシャイン壁画」
1976年にオープンした西堀地下駐車場の壁には長大なペンキ画が描かれており、カラフルな色彩とファンシーな絵柄が特徴で、暗い地下空間を明るく彩り続けてきたとのこと。
駐車場に直結する地下街「西堀ローサ」が営業を終えてしまったために、駐車場も現在利用休止中で実際に見ることはできないんだけど、この時代を感じるポップなテイスト、たまんないね。

こちらは西堀ローサにあった絵やデザインでしょうか。
昔の地下街ってシャンデリアとか噴水とかあったりして、豪華で優雅を感じる特別な空間だったよね。

そして最後のクライマックスがこちら。
待ってました!!「松田ペットの『例の看板』」です!!

松田ペットの「例の看板」は、長岡市にある松田ペット本店を中心とする半径10キロに多数展開し、地元住民の思い出の風景として根付いているもの。
すべて看板画家の手描きによって作られ、一枚一枚微妙に違うのがおもしろい。

ビーグル・チワワ・ヨークシャーテリアの3匹が並ぶ、例の看板で最もオーソドックスなフォーマットは「松田三連星」と呼ばれ、絵柄が変わったり作者が変わったりすることで、手描きならではのゆらぎが見どころ。
最近では長岡市の新名物として三連星柄の人間用お菓子といったおみやげまで発売するという人気ぶり。
ぜひ現地へ行って自然に溶け込む松田ペット看板を生で見てほしい!!
その時の様子がこちら↓

奥の部屋へ進むと、うお~!!!
松田ペットの本店で見たあの看板たちがズラリ!!
これは壮観ですな!!

これらの看板は、交換用の予備として倉庫にあったものを展示。
雨風にさらされてないだけに、めちゃくちゃキレイ。
下の大きい看板は駐車場にあるタイプで、経年劣化で色褪せた看板を回収して上から塗り直したものだそうで、下地には以前の絵が隠されている。

近くで見ると、印刷とかじゃなくて、ちゃんとペンキで塗られているのがわかる。
色の重ね方や塗り方で、わんちゃん特有のふわふわ感と愛くるしさを表現。かわいい~!!

一角には、今にも絵師が現れて例の看板を描き出しそうなブルーシートが。
かつては松田ペットのロゴも手描きだったのが、現在はカッティングシートを貼りこんだ状態の素材を仕入れて、三連星だけを手描きしている様子。
材質も以前はトタン板だったものを、現在は軽くて扱いやすいアルミシート入りの樹脂材に。

新たに制作された例の看板の後ろへ回ると、裏側にも例の看板が!
使われなくなった看板でも、裏返して再利用されてるんですね。

ちなみに例の看板を描き続けてきた初代絵師である近藤さんは高齢となったことで、2023年頃から2代目絵師青柳さんへと受け継がれていったそう。
しかしその交代は2025年に公表されるまでほとんど誰にも気づかれなかったくらい、初代をリスペクトし、フォーマットが忠実に継承されているんですね。
その後、地域の美術学生が描き方を教わったり、近藤さんのご子息が描くなど、例の看板は多くの人々によって作られ、今や長岡の文化に。
こういう、地域ならではの文化ってずっとその土地に住んでると当たり前すぎて気づかないんだよね。
全国に知られていないローカルな魅力、まだまだありそう!

こちらは現存する最古の例の看板。
当時は「将来に発展していくように」と、松田商展という名前で営業。
このころはまだイヌやネコを扱っておらず、鳥と金魚を販売。時代ですね。

こちらは私も見つけた、全身が描かれているタイプ。
三連星と同時期に何枚か制作されたもので、2匹にすることで、よりわんちゃんの魅力がアップ。

今も続く三連星のフォーマットがこの時期に決まったそう。
当時人気の三犬種を選び、その中でも圧倒的に人気があったチワワがセンターを務め、その後、センター交代や背景色の違いが生まれてくる。

こちらは絵師交代のころ、ひとつのスタイルとして生み出され、すぐに消えてしまった「松田大サーカス」スタイル。まぼろし~!
松田ペットの看板はこんな風に、変わらないものと変わり続けているもの、均一なものと個性のあるものを繰り返しながら続いてるんですね。
どのまちにいっても同じもので溢れている今の時代だからこそ、ローカルならではの文化を探して楽しんでみよ~

ちなみにこの企画展が開催された新潟市美術館そのものも見どころがあって、ここは1985年に開館。
日本近代建築の巨匠といわれる前川國男、最晩年の作品とのことで、そう聞くとありがたく感じちゃうよね。

オリーブグリーンの外壁は打ち込みタイル工法という、建物本体とタイルがひとつになっているという特殊な作りに。タイル一枚一枚が均一ではなく、微妙に色が違い、またタイルの間の目地が深く、太陽の光が当たることで深い陰影が生まれ、建物全体をのっぺりさせず、力強い立体感を演出。

コンクリートの柱には木目を転写し、角を丸めた造り。
自然素材のような温かみや手触り感を表現。
今では難しい、贅沢な工法とデザインだそう。

風除室のエントランスは天井を少し低めに抑えられ、中に進むにつれてふんわり広がることで、かまくらをイメージ。
茶色の足元は地面の延長を、オレンジ色のタイルは温かさを、青い天井はくもりがちな新潟に青空を表現。

中に入ると吹き抜けになってて天井が高い!
ここにも暖色系の床と青空をイメージした天井、自然を表すオリーブグリーンの壁。
さらにカラフルなベンチと大きな窓ガラスで、屋内にいながら明るい雰囲気に。

この色使いは館内のあちこちで見られ、前川國男マメ知識を知った上で訪れると、高尚ぶることができる。

ロビーから展示室へ続く通路は、ややスロープになっていて、これはここの土地がかつて砂丘だったことから、その地形を意識。

さらに、美術館の隣にある西大畑公園も同時に前川國男が設計して、かつて新潟の街中に張り巡らされていた「堀割と柳」の風景を再現。
また、公園の舗装のパターンは美術館のアプローチと共通のデザインになっていて、歩いているうちに自然と美術館へ導かれるように計算されてるんだって。
建築デザインにいちいち意味があると、単なる建物でも見ごたえがあっておもしろいね。

路傍小芸術って、気づいてないだけでどのまちにもありえるものだから、素人が作る素晴らしい作品を見つけ、全国のあらゆるまちで開催されるといいな。
どこにでもありがちな新たに作ったアクティビティとか、むりやり話題にした見栄えのする店を売りにするんじゃなくて、こういった自然発生的に現れた、街に溶け込むそのへんにあるものをおもしろがろうよ。
新潟市美術館
住所: 新潟県新潟市中央区西大畑町5191-9
TEL: 025-223-1622
開館時間: 9:30~17:00
定休日: 月曜日
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